右翼(保守)論壇の劣化~台湾誇大思想~

 日本の右翼(保守)論壇によくある政治主張として定番のものである。しかしそれこそ現代の右翼(保守)論壇の思想的弱点を包括してるといえる。なぜなら台湾を利用して愛国誇示や中国脅威論を語ることが多いからだ。俺個人として台湾は行きたい国のひとつとして数えられており、九州並みの広さで、他民族の国家で異なる伝統、言語もある。行ってみたい観光地もたくさんある。鉄道が好きなので阿里山森林鉄道とかは一度乗ってみたいし、九分にはいってみたいものである。

 しかし右翼論壇のいう台湾誇大思想に関してはかなり否定的だ。彼らにとって台湾は親日国家で反中国家という認識で語っており、台湾からの視点が欠如しているように感じる。いうなれば「俺のことを感謝し大好きでいてくれるお前のことが好き」というナルシスト思考のようなものである。

 その元となったのが元マンガ右翼扇動士である小林よしのりが執筆した「台湾論」であるというのは間違いないだろう。この台湾論では大日本帝国による台湾統治で八田與一による灌漑水路の整備、磯栄吉の米の品種改良で農業に貢献というインフラ整備を持ち出しての日本の植民地支配の過剰美化を行っている。

 それだけでなく李登輝氏を偉い人、陳水扁氏は無実の罪で投獄された人、馬英九は大罪人という国民党政府による台湾統治を批判した。

 これが日本の「国士様」というインターネットや書籍での言説扇動でみられる親日国家台湾という価値観のベースになっている。沖縄県において米軍基地の縮小運動、普天間飛行場辺野古移設の反対運動を行う沖縄県民と、日本本土の左翼活動家と利害が一致したように、日本の右翼言説扇動士(国士様)と戦前の日本統治下で生まれ、戦後日本に留学した金美齢氏や黄文雄氏等の台湾独立運動を推進する「台湾青年社」と利害が一致し日本の右翼論壇と連携している。一例が台湾大地震の時の曽野綾子氏が会長務めていた日本財団によって3億円を寄付し、李登輝氏が曽野綾子氏に日本で何か起これば真っ先に駆け付けるのは台湾の救助隊であると約束したことである。結果としてはその後の東日本大震災では、諸事情で中国、韓国の救助隊に先を越されたものの200億円の義援金を供出し日本人を驚かせた。この事実が自民党の青年局の公式サイトによる戦前の植民地時代に日本が果たした役割への尊敬とみていますが、やはり台湾人の視点が抜け落ちている感も否めません。

 もちろん台湾総督府時代の後藤新平による生物学の原則に則り、阿片吸引の常習者を漸減させるといった郷に入ればの施策で経済発展の契機を作るという功の実績があったのは事実だ。

 その一方で彼らは霧社事件といった台湾原住民への強制的な労働供出の強要等を背景に台湾原住民が事件を起こしたこと、台湾人慰安婦について触れることがない。台湾について反中国家、中国共産党に対する砦としか考えてないからそうなるのだろう。もし独立が正式になされ、慰安婦に対する賠償や尖閣諸島の領有をことさら強く主張するようになれば、反共というただ一転で中華民国台湾とともに同士としてみなしてた韓国との関係が、2002年のFIFAワールドカップをきっかけにそれまでの認識が嘘のように嫌韓に徹底したネット右翼言説士が生まれ根拠の少ない差別発言を繰り返してるように台湾に対してもそうなるのであろうか気になるところです。

 なお台湾については1945年に太平洋戦争の日本側の敗戦を受けてカイロ宣言に基づいて失地回復大義名分で日本に代わって台湾の行政を蒋介石国民政府主席率いる中華民国が引き継ぎました。最初は中華民国の官僚や軍人といった役人を歓迎したが、汚職が凄まじく、犯罪においても処罰されても犯人の籍を知らせるのも禁止されていました。さらには台湾の資材が中国大陸の上海の国際市場で競売にかけられる始末。これが狗(日本)去りて豚(中華民国)来たると呼んで揶揄されるまでになりました。ここが中華民国戒厳令の統治下との比較で日本統治時代がマシという評価をする人が多い理由になり、ネット右翼国士様がそこにつけ込んでる所です。

 更には日本降伏後の1946年から中華民国の大陸本土で行われていた国共内戦ではシベリア抑留された日本軍の最新式兵器の鹵獲やソ連からの援助で最終的に優位になった共産党軍に国民党軍が太刀打ちできず1950年の海南島陥落で中国大陸の本土拠点を喪失し台湾地区の防衛に専念することになりました。その結果中国は中華民国中華人民共和国による分断国家として現在に至ります。ゆえに中国共産党においても中国大陸に存在する政府は世界でただ一つと「一つの中国」を提唱してることで中国統一を巡って対立関係が続き1954年に第一次、1958年に第二次の台湾海峡危機が起こっています。

 ここが中国による台湾侵攻を日本のネット右翼国士様が煽る所になっています。特に1958年に関しては金門島への砲戦で国府軍に戦死者が出る等、領有が危ぶまれた時期ですが米軍の武器供与により厦門の砲兵陣地を攻撃しダメージを与えたことにより、金門島への砲撃が中止されました。最終的に形骸的な隔日攻撃に留まるようになり、1979年の米中国交樹立で砲撃が停止されました。こうして金門・馬祖両島の領有を維持し現在に至っています。また1996年にも李登輝政権下で行われた台湾総統選挙においての脅迫の意図でのミサイル実験が行われています。

 このように幾度となく両国において対立が続いてるのは事実で、現在においても中国は西太平洋へ経済進出し第一列島線第二列島線を勢力下に置こうとしており、第一列島線上にある台湾はまさしく最重要地域といえるでしょう。日本が石油を輸入する際に台湾海峡マラッカ海峡を通らざるを得ないゆえに日本から見ても安全保障上で大問題でしょう。しかし台湾関連すべての情報を台湾有事に結び付けるというのはかなり失礼極まるといえます。しかも自称、他称の保守論壇という右翼言説活動家たちが自閉的、同語反復的に言説を繰り返し、同じ右翼論壇でも異説を唱えるとかつての「隠れキリシタン」ならぬ「隠れ左翼だろう?」と批判の大合唱が起こる。そういう意味で日本の右翼論壇の言説の貧しさと知的退廃の現実を表しているといえます。特に櫻井よしこ氏がひどくて台湾の議会選挙や総統選挙で国民党候補が勝つたびに中国の情報工作と煽るので論外ですね。櫻井よしこ氏といえば去年の秋ごろにフジテレビ系列の「日曜報道 THE PRIME」にてウクライナ戦線について議論していた際にいまだ海外派遣部隊は組織として発砲できないとか、第二次大戦終了後に日本軍兵士が台湾やインドに参戦したというひどい嘘をついていました。このような評論家が「保守主義」を標榜しているのが保守の劣化を象徴しています。

 台湾は現在、民主化し大陸統治機構から台湾統治機構に移行しております。その中で近代から現在に至るまで、清朝、日本の台湾総督府中華民国台湾省中華民国=台湾の変遷がありました。自称保守の右翼言説扇動家や国士様はもういい加減に台湾誇大思想はやめて、台湾の歴史と現実を改めて直視すべきである。それを踏まえず親日台湾やら台湾有事を煽ることは台湾にも失礼にあたる行為でしょう。